朗読の試行錯誤
2026-02-09更新
私の教室では、先にお手本を示しません。
原則として、私が自分から先に読んで聞かせるという手順はなく、みんなで一斉に音読するところからスタートして、その後、ひとりずつ朗読をします。
これは決して意地悪やサボりではなく、私の読み方をなぞるだけの「コピー」作業が始まってしまうことを避けるためです。
朗読の面白さは、上手な朗読のモノマネではなく、自分自身がテキストと向き合い、適切な距離感を掴み取った結果を声に出してみることだと私は考えています。
朗読に「たった一つの正解」は存在しません。
たとえば、一つの詩があるとして、その詩に曲をつけるとしたら、作曲家によって全く異なるメロディが生まれるはずです。
明るい長調にするのか、不穏な響きにするのか、どこでテンポを落とすのか。
そのすべてが、テキストに対する「解釈」の違いです。 朗読もこれと同じです。
私が示した読み方は、あくまで私という一人の人間が導き出した「一例」に過ぎません。
それを「お手本」「正解」にすると、皆さんの中に眠っている、それぞれの表現の芽を摘んでしまうことになります。
だからこそ、教室では私と、生徒さん全員で試行錯誤しながら、グループレッスン形式で読みを立ち上げていく過程を共有します。
完成された正解を渡されるよりも、迷いながら自分自身の答えを見つけていくほうが、はるかに楽しく、さらなる発見も格段に多いからです。